良かれと思って切った髪がクレームになる。理容師が基本を省略してはいけない理由
2026年10月22日
今日はスタッフがお客様からクレームをいただいた。
内容は、髪を短く切りすぎてしまったというもの。
お客様からは「半分くらい切ってほしい」という注文があったらしい。しかし、まさか刈り上げられるとは思っていなかったようだ。
「刈り上げないで」とは言っていない。でも「刈り上げて」とも言っていない。
この認識の違いが、今回のクレームにつながったのだと思う。
良かれと思ったことが正解とは限らない
担当したスタッフも、決して適当に切ったわけではないと思う。
お客様に似合うと思ったのかもしれないし、前回から伸びた分を切ったつもりだったのかもしれない。
ただ、ここが難しいところ。
良かれと思ってやったことが、必ずしも相手のためになるとは限らない。
お客様の中には、自分の想像以上に格好良くしてほしい人もいれば、勝手に髪型を変えられることを極端に嫌がる人もいる。
まさに百人百色。
理容師の仕事は、ただ言われたとおりに髪を切ることではない。でも、自分が正しいと思った髪型を勝手に押し付けることでもない。
【提案するのは理容師の仕事。納得して選んでもらうのはお客様の権利。】
僕も昔、まったく同じ失敗をしている
実は僕も、昔お客様から「3mmのバリカンで切って」と言われ、そのとおりに切って怒られたことがある。
当時の僕は「3mmで切ってと言ったじゃないか」と思っていた。
今考えると最低だなと思う。
どこまで3mmで切るのか。最後に髪を切ったのはいつなのか。そもそもどんな仕上がりを想像しているのか。
確認しなければならないことはいくらでもあった。
「言われたから切った」は、プロとしての責任を果たしたことにはならない。
カルテを見たから大丈夫、ではない
今回のお客様は、半年以上ご来店のなかった3回目の方だった。
過去のカルテは確認していたものの、お客様からは以前の記録を見ていないのかという趣旨のお叱りもいただいた。
僕はスタッフに、半年以上ご来店のないお客様は、ほぼ新規のお客様と同じくらい丁寧にカウンセリングしてほしいと伝えた。
半年も経てば、髪型も好みも生活環境も変わる。
カルテは大切な情報だけど、過去の記録が現在の希望と一致している保証はない。
だからこそ、オウム返しが大切になる。
「半分くらいですね」と受け止め、さらに「横は刈り上げますか? ハサミで自然に残しますか?」と確認する。
そして最後に、「ご希望を踏まえて、今回はこういう髪型に切りますよ。よろしいですか?」と完成形を共有する。
オウム返しは単に言葉を繰り返すことではない。お客様と自分の認識にズレがないか確かめるための基本動作だと思う。
経験を積んでも、基本を省略しない
今回改めて思ったのは、クレームというのは、一般的に決まっている手順やサービスの基本から逸脱したときに起きやすいのではないか、ということ。
もちろん、基本を守ればすべてのクレームがなくなるわけではない。
ただ、経験を積むほど、相手の希望を聞いただけで完成形を想像できてしまう。そして、その自分の判断を確認せずに進めてしまうことがある。
技術が上達しても、接客の基本を省略していい理由にはならない。
【型を守るからこそ、その上に自分らしい技術や提案が生きる。】
今回のスタッフには、切り始める前に必ず最後の確認をするよう伝えた。
同時に、これはスタッフ一人だけの問題ではなく、僕も含めた全員が振り返るべきことだと思う。
お客様に喜んでもらいたいという気持ちは大切。でも、その気持ちだけで勝手に判断してはいけない。
良かれと思うからこそ、きちんと確認する。
当たり前のことだけど、こういう当たり前を何年経っても丁寧に続けられる理容師でありたい。



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